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第一章 夕顔の物語 夏の物語 第三章[第五段 源氏、二条院に帰る] (40)つい微笑ま(ほほえま)れて、「うまくなくても、まったく書かないのは良くありません。お教え申し上げましょうね」とおっしゃると、ちょっと横を向いてお書きになる手つきや、筆をお持ちになる様子があどけないのも、かわいらしくてたまらないので、我ながら不思議だとお思いになる。「書き30204116.534五しまった」と、1012031122四がってお隠しになるのを、無理に御覧になると、「恨み言を言われる理由が分かりません。わたしはどのような方のゆかりなのでしょう」と、とても幼稚だが、将来の成長が思いやられて、ふっくらとお書きになっている。亡くなった尼君の筆跡に4234二いるのであった。「当世風の手本を習ったならば、とても良くお書きになるだろう」と御覧になる。お人形なども、特別に御殿をいくつも造り並べて、一緒に遊んでは、この上ない321二晴らしの相手である。あの残った女房たちは、兵部卿(きょう)宮がお越しになって、お尋ね申し上げなさったが、お答え申し上げるすべもなくて、困り合っているのであった。「暫く(しばらく)の間、他人に聞かせてはならぬ」と源氏の君もおっしゃるし、少納言の乳母(うば)も考えていることなので、113113三口止めさせていた。ただ、「行く方も知れず、少納言の乳母(うば)がお連れしてお隠し申したことで」とばかりお答え申し上げるので、宮もしょうがないとお思いになって、「亡くなった尼君も、あちらに姫君がお移りになることを、とても嫌だとお思いであったことなので、乳母(うば)が、ひどく21323142三た考えから、すんなりとお移りになることを、不都合だ、などと言わないで、自分の一存で、連れ出してどこかへやってしまったのだろう」と、泣く泣くお帰りになった。
〰 おもしろ「ことば変換」〰 左下「れんじろう」内に下の文をコピペし語を選択後、変換ボタンを押して読んでみよう。変換語によっては面白いですよ。 【現代語訳】 第三章[第二段 尼君死去し寂寥(せきりょう)と孤独の日々](40)つい微笑ま(ほほえま)れて、「うまくなくても、まったく書かないのは良くありません。お教え申し上げましょうね」とおっしゃると、ちょっと横を向いてお書きになる手つきや、筆をお持ちになる様子があどけないのも、かわいらしくてたまらないので、我ながら不思議だとお思いになる。「書き損っ(そこなっ)てしまった」と、恥ずかしがってお隠しになるのを、無理に御覧になると、「恨み言を言われる理由が分かりません。わたしはどのような方のゆかりなのでしょう」と、とても幼稚だが、将来の成長が思いやられて、ふっくらとお書きになっている。亡くなった尼君の筆跡に似ているのであった。「当世風の手本を習ったならば、とても良くお書きになるだろう」と御覧になる。お人形なども、特別に御殿をいくつも造り並べて、一緒に遊んでは、この上ない憂さ晴らしの相手である。あの残った女房たちは、兵部卿(きょう)宮がお越しになって、お尋ね申し上げなさったが、お答え申し上げるすべもなくて、困り合っているのであった。「暫く(しばらく)の間、他人に聞かせてはならぬ」と源氏の君もおっしゃるし、少納言の乳母(うば)も考えていることなので、固く口止めさせていた。ただ、「行く方も知れず、少納言の乳母(うば)がお連れしてお隠し申したことで」とばかりお答え申し上げるので、宮もしょうがないとお思いになって、「亡くなった尼君も、あちらに姫君がお移りになることを、とても嫌だとお思いであったことなので、乳母(うば)が、ひどく出過ぎた考えから、すんなりとお移りになることを、不都合だ、などと言わないで、自分の一存で、連れ出してどこかへやってしまったのだろう」と、泣く泣くお帰りになった。 |