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第一章 夕顔の物語 夏の物語 第三章 六条の貴婦人の物語 初秋の物語(16)「ああ、やかましい」と、これには1042203四されなさる。何の響きともお分り(わかり)にならず、とても不思議で耳障りな音だとばかりお聞きになる。ごたごたしたことばかり多かった。衣を打つ砧(きぬた)の音も、かすかにあちらこちらからと聞こえて来て、空を飛ぶ11130二の声も、一緒になって、堪え(こたえ)きれない情趣が多い。端近いご座所だったので、121130214三を引き開けて、一緒に外を御覧になる。広くもない庭に、しゃれた呉竹(くれたけ)や、前栽(せんざい)の露は、やはりこのような所も同じように光っていた。虫の声々が入り乱れ、壁の内側のこおろぎでさえ、時たまお聞きになっているお耳に、じかに押し付けたように鳴き112211132三ているのを、かえって違った感じにお思いなさるのも、お気持ちの深さゆえに、すべての欠点が許されるのであろうよ。白い113424三、薄紫色の柔らかい衣を重ね着て、地味な姿態は、とてもかわいらしげに1260.52260.5四な感じがして、どこそこと取り立てて優れた所はないが、か細くしなやかな感じがして、何かちょっと言った感じは、「ああ、いじらしい」と、ただもうかわいく思われる。気取ったところをもう少し加えたらと、御覧になりながら、なおもくつろいで逢い(あい)たく思われなさるので、「さあ、ちょっとこの辺の近い所で、気楽に夜を明かそう。こうしてばかりいては、とても辛いなあ」とおっしゃると、「とてもそんな。急でしょう」と、とてもおっとりと言ってじっとしている。
〰 おもしろ「ことば変換」〰 ![]() 左下「れんじろう」内に下の文をコピペし語を選択後、変換ボタンを押して読んでみよう。変換語によっては面白いですよ。 【現代語訳】 第三章 六条の貴婦人の物語 初秋の物語(16)「ああ、やかましい」と、これには閉口されなさる。何の響きともお分り(わかり)にならず、とても不思議で耳障りな音だとばかりお聞きになる。ごたごたしたことばかり多かった。衣を打つ砧(きぬた)の音も、かすかにあちらこちらからと聞こえて来て、空を飛ぶ雁(かり)の声も、一緒になって、堪え(こたえ)きれない情趣が多い。端近いご座所だったので、遣戸(やりど)を引き開けて、一緒に外を御覧になる。広くもない庭に、しゃれた呉竹(くれたけ)や、前栽(せんざい)の露は、やはりこのような所も同じように光っていた。虫の声々が入り乱れ、壁の内側のこおろぎでさえ、時たまお聞きになっているお耳に、じかに押し付けたように鳴き乱れているのを、かえって違った感じにお思いなさるのも、お気持ちの深さゆえに、すべての欠点が許されるのであろうよ。白い袷(あわせ)、薄紫色の柔らかい衣を重ね着て、地味な姿態は、とてもかわいらしげに華奢(きゃしゃ)な感じがして、どこそこと取り立てて優れた所はないが、か細くしなやかな感じがして、何かちょっと言った感じは、「ああ、いじらしい」と、ただもうかわいく思われる。気取ったところをもう少し加えたらと、御覧になりながら、なおもくつろいで逢い(あい)たく思われなさるので、「さあ、ちょっとこの辺の近い所で、気楽に夜を明かそう。こうしてばかりいては、とても辛いなあ」とおっしゃると、「とてもそんな。急でしょう」と、とてもおっとりと言ってじっとしている。 |