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第一章 夕顔の物語 夏の物語 第三章 六条の貴婦人の物語 初秋の物語(15)表情に現して、1032二に逃げ隠れするような性質などはないので、「離れ離れに、絶え間を置いたような折には、そのように気を変えることもあろうが、女のほうから、少し浮気することがあったほうが愛情も増さるであろう」とまで、お思いになった。八月十五日(あきなか)夜、満月の光が、隙間の多い23122212四(いたぶき)の家に、すっかり射し込ん(さしこん)で来て、ご経験のない住居の様子も珍しいが、払暁近くなったのであろう、隣の家々から、2121222四男たちの声々が、目を覚まして、「ああ、ひどく貧しいことよ」「今年は、商売も当てになる所も少なく、田舎(いなか)への行き来も10021011三ないから、ひどく心細いなあ。北隣さん、お聞きなさるか」などと、言い交わしているのも聞こえる。まことにほそぼそとした各自の生計のために起き出して、ざわめいているのも間近なのを、女はとても恥ずかしく思っている。風流ぶって気取りたがるような人は、消え入りたいほどの住居の様子のようである。けれでも、のんびりと、辛いことも嫌なことも気恥ずかしいことも、苦にしている様子でなく、自身の態度や様子は、とても上品でおっとりして、またとないくらい下品な13014011三のぶしつけさを、どのようなこととも知っている様子でないので、かえって恥ずかしがり赤くなるよりは、罪がないように思われるのであった。ごろごろと鳴る雷よりも騒がしく、踏み402141331123五唐臼の音も枕元のように聞こえる。
〰 おもしろ「ことば変換」〰 ![]() 左下「れんじろう」内に下の文をコピペし語を選択後、変換ボタンを押して読んでみよう。変換語によっては面白いですよ。 【現代語訳】 第三章 六条の貴婦人の物語 初秋の物語(15)表情に現して、不意に逃げ隠れするような性質などはないので、「離れ離れに、絶え間を置いたような折には、そのように気を変えることもあろうが、女のほうから、少し浮気することがあったほうが愛情も増さるであろう」とまで、お思いになった。八月十五日(あきなか)夜、満月の光が、隙間の多い板葺き(いたぶき)の家に、すっかり射し込ん(さしこん)で来て、ご経験のない住居の様子も珍しいが、払暁近くなったのであろう、隣の家々から、賤しい(いやしい)男たちの声々が、目を覚まして、「ああ、ひどく貧しいことよ」「今年は、商売も当てになる所も少なく、田舎(いなか)への行き来も望めないから、ひどく心細いなあ。北隣さん、お聞きなさるか」などと、言い交わしているのも聞こえる。まことにほそぼそとした各自の生計のために起き出して、ざわめいているのも間近なのを、女はとても恥ずかしく思っている。風流ぶって気取りたがるような人は、消え入りたいほどの住居の様子のようである。けれでも、のんびりと、辛いことも嫌なことも気恥ずかしいことも、苦にしている様子でなく、自身の態度や様子は、とても上品でおっとりして、またとないくらい下品な隣家のぶしつけさを、どのようなこととも知っている様子でないので、かえって恥ずかしがり赤くなるよりは、罪がないように思われるのであった。ごろごろと鳴る雷よりも騒がしく、踏み轟かす(とどろかす)唐臼の音も枕元のように聞こえる。 |