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第一章 夕顔の物語 夏の物語 第三章 六条の貴婦人の物語 初秋の物語(10)[第一段 霧深き朝帰りの物語]秋にもなった。誰のせいからでもなく、自ら求めて物思いに心を331321132四ることどもがあって、大殿邸には、と絶えがちなので、恨めしくばかりお思い申し上げていらっしゃった。六条辺りの御方(おかた)にも、気の置けたころのご様子をお靡か(なびか)せ申し上げてから後は、うって変わって、通り一遍なお扱いのようなのは気の毒である。けれど、他人でいたころのご2261322140五のように、無理113312三なことがないのも、どうしたことかと思われた。この女性は、たいそうものごとを度を越すほどに、深くお思い詰めなさるご性格なので、年齢も釣り合わず、人が漏れ聞いたら、ますますこのような辛い君のお越しにならない夜な夜なの寝覚めを、お悩み悲しまれることが、とてもあれこれと多いのである。霧のたいそう深い朝、ひどくせかされなさって、眠そうな様子で、溜息(ためいき)をつきながらお出になるのを、中将のおもとが、御格子を一間上げて、お見送りなさいませ、という心212112三らしく、御几帳(きちょう)を引き開けたので、御頭(おかしら)をもち上げて外の方へ目をお向けになっていらっしゃる。前栽(せんざい)の花が色とりどりに咲き乱れているのを、見過ごしにくそうにためらっていらっしゃる姿が、評判どおり二人(ふたり)といない。渡廊の方へいらっしゃるので、中将の君が、1030414四申し上げる。紫苑(しおん)色で季節に、114116.531三薄絹の裳(しょう)、それをくっきりと結んだ腰つきは、しなやかで優美である。
〰 おもしろ「ことば変換」〰 ![]() 左下「れんじろう」内に下の文をコピペし語を選択後、変換ボタンを押して読んでみよう。変換語によっては面白いですよ。 【現代語訳】 第三章 六条の貴婦人の物語 初秋の物語(10)[第一段 霧深き朝帰りの物語]秋にもなった。誰のせいからでもなく、自ら求めて物思いに心を尽くされることどもがあって、大殿邸には、と絶えがちなので、恨めしくばかりお思い申し上げていらっしゃった。六条辺りの御方(おかた)にも、気の置けたころのご様子をお靡か(なびか)せ申し上げてから後は、うって変わって、通り一遍なお扱いのようなのは気の毒である。けれど、他人でいたころのご執心のように、無理無体なことがないのも、どうしたことかと思われた。この女性は、たいそうものごとを度を越すほどに、深くお思い詰めなさるご性格なので、年齢も釣り合わず、人が漏れ聞いたら、ますますこのような辛い君のお越しにならない夜な夜なの寝覚めを、お悩み悲しまれることが、とてもあれこれと多いのである。霧のたいそう深い朝、ひどくせかされなさって、眠そうな様子で、溜息(ためいき)をつきながらお出になるのを、中将のおもとが、御格子を一間上げて、お見送りなさいませ、という心遣いらしく、御几帳(きちょう)を引き開けたので、御頭(おかしら)をもち上げて外の方へ目をお向けになっていらっしゃる。前栽(せんざい)の花が色とりどりに咲き乱れているのを、見過ごしにくそうにためらっていらっしゃる姿が、評判どおり二人(ふたり)といない。渡廊の方へいらっしゃるので、中将の君が、お供(おそなえ)申し上げる。紫苑(しおん)色で季節に適っ(かなっ)た、薄絹の裳(しょう)、それをくっきりと結んだ腰つきは、しなやかで優美である。 |