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[第四段 それから数日後] (43)「近づけば消えるという帚木(ははきぎ)のような、あなたの心も知らないで園原への道に、空しく(むなしく)迷ってしまったことです。申し上げるすべもありません」と詠んで贈られた。女も、やはり、まどろむこともできなかったので、「しがない1261.531433五に生きるわたしは情けのうございますから見えても触れられない帚木(ははきぎ)のようにあなたの前から姿を消すのです」とお答え申し上げた。小君が、とてもお気の毒に思って眠けを忘れてうろうろと行き来するのを、女房たちが変だと思うだろう、と心配なさる。例によって、供人たちは44113130三こけているが、お一方はぼうっと白けた感じで思い続けていらっしゃるが、他(ほか)の女と違った気の強さが、やはり消えるどころかはっきり現れている、と131212213四、こういう女であったから心10211132三たのだと、一方ではお思いになるものの、癪(しゃく)にさわり情けないので、ええいどうともなれとお思いになるが、そうともお112124114四きれず、「隠れている所に、それでも連れて行け」とおっしゃるが、「とてもむさ苦しい所に2012016.534四いて、女房が大勢いますようなので、恐れ多いことで」と申し上げる。気の毒にと思っていた。「それでは、おまえだけは、わたしを裏切るでないぞ」 とおっしゃって、お側(おそば)に寝かせなさった。お若く優しいご様子を、嬉しく(うれしく)素晴らしいと思っているので、あの薄情な女よりも、かえってかわいく思われなさったということである。
〰 おもしろ「ことば変換」〰 左下「れんじろう」内に下の文をコピペし語を選択後、変換ボタンを押して読んでみよう。変換語によっては面白いですよ。 【現代語訳】 光る源氏 十七歳夏の参議(宰相)兼近衛中将時代の物語 第二章 女性体験談 [[第三段 空蝉(うつせみ)の寝所に忍び込む] (43)「近づけば消えるという帚木(ははきぎ)のような、あなたの心も知らないで園原への道に、空しく(むなしく)迷ってしまったことです。申し上げるすべもありません」と詠んで贈られた。女も、やはり、まどろむこともできなかったので、「しがない境遇に生きるわたしは情けのうございますから見えても触れられない帚木(ははきぎ)のようにあなたの前から姿を消すのです」とお答え申し上げた。小君が、とてもお気の毒に思って眠けを忘れてうろうろと行き来するのを、女房たちが変だと思うだろう、と心配なさる。例によって、供人たちは眠りこけているが、お一方はぼうっと白けた感じで思い続けていらっしゃるが、他(ほか)の女と違った気の強さが、やはり消えるどころかはっきり現れている、と悔しく、こういう女であったから心惹かれ(こころひかれ)たのだと、一方ではお思いになるものの、癪(しゃく)にさわり情けないので、ええいどうともなれとお思いになるが、そうともお諦めきれず、「隠れている所に、それでも連れて行け」とおっしゃるが、「とてもむさ苦しい所に籠もっていて、女房が大勢いますようなので、恐れ多いことで」と申し上げる。気の毒にと思っていた。「それでは、おまえだけは、わたしを裏切るでないぞ」 とおっしゃって、お側(おそば)に寝かせなさった。お若く優しいご様子を、嬉しく(うれしく)素晴らしいと思っているので、あの薄情な女よりも、かえってかわいく思われなさったということである。 |