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[第二段 左馬頭の体験談(浮気な女の物語)](22)「それで、その手紙には」とお尋ねになると、「いや、格別なことはありませんでしたよ。『山家の垣根は荒れていても時々はかわいがってやってください撫子(なでしこ)の花を』思い出したままに行きましたところ、いつものように無心なようでいながら、ひどく物思い顔で、荒れた家の露のしっとり濡れ(ぬれ)ているのを41141114三て、虫の鳴く音と競うかのように泣いている様子は、昔物語めいて感じられました。『庭にいろいろ咲いている花はいずれも皆美しいがやはり40204133四の花が一番美しく思われます』大和撫子(やまとなでしこ)のことはさておいて、まず『せめて塵(ちり)だけは払おう』などと、親の12144140三を取ります。『床に積もる塵(ちり)を払う袖を涙に濡れ(ぬれ)ている常夏にさらに激しい風の吹きつける秋までが来ました』とさりげなく言いつくろって、本気で恨んでいるようにも見えません。涙をもらし落としても、とても恥ずかしそうに遠慮がちに取り33131332四隠して、薄情を恨めしく思っているということを知られるのが、とてもたまらないらしいことのように思っていたので、気楽に111114三て、再び通わずにいましたうちに、1401131四なく姿を晦まし(くらまし)ていなくなってしまったのでした。まだ生きていれば、みじめな生活をしていることでしょう。愛しい(いとしい)と思っていましたころに、うるさいくらいにまつわり付くような様子に見えたならば、こういうふうには行方不明(ゆくえふめい)にはさせなかったものを。
〰 おもしろ「ことば変換」〰 左下「れんじろう」内に下の文をコピペし語を選択後、変換ボタンを押して読んでみよう。変換語によっては面白いですよ。 【現代語訳】 光る源氏 十七歳夏の参議(宰相)兼近衛中将時代の物語 第二章 女性体験談 [第二段 左馬頭の体験談(浮気(うわき)な女の物語)] (22)「それで、その手紙には」とお尋ねになると、「いや、格別なことはありませんでしたよ。『山家の垣根は荒れていても時々はかわいがってやってください撫子(なでしこ)の花を』思い出したままに行きましたところ、いつものように無心なようでいながら、ひどく物思い顔で、荒れた家の露のしっとり濡れ(ぬれ)ているのを眺めて、虫の鳴く音と競うかのように泣いている様子は、昔物語めいて感じられました。『庭にいろいろ咲いている花はいずれも皆美しいがやはり常夏の花が一番美しく思われます』大和撫子(やまとなでしこ)のことはさておいて、まず『せめて塵(ちり)だけは払おう』などと、親の機嫌を取ります。『床に積もる塵(ちり)を払う袖を涙に濡れ(ぬれ)ている常夏にさらに激しい風の吹きつける秋までが来ました』とさりげなく言いつくろって、本気で恨んでいるようにも見えません。涙をもらし落としても、とても恥ずかしそうに遠慮がちに取り繕い隠して、薄情を恨めしく思っているということを知られるのが、とてもたまらないらしいことのように思っていたので、気楽に構えて、再び通わずにいましたうちに、跡形なく姿を晦まし(くらまし)ていなくなってしまったのでした。まだ生きていれば、みじめな生活をしていることでしょう。愛しい(いとしい)と思っていましたころに、うるさいくらいにまつわり付くような様子に見えたならば、こういうふうには行方不明(ゆくえふめい)にはさせなかったものを。 |