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第一章 雨夜の品定めの物語[ [第三段 左馬頭、藤式部丞(すすむ)ら女性談義に加わる(11)自分でも額髪を触って、34200314四なく心細いので、泣顔になってしまう。堪えても涙がこぼれ出してしまうと、何かの時々には我慢もできず、後悔も多いようなので、仏もかえって未練がましいと、きっと御覧になるでしょう。濁世(じょくせ)に染まっている間よりも、生悟りは、かえって悪道に1032二さ迷うことになるに違いなく思われます。切っても切れない前世からの宿縁も浅くなく、尼にもさせず捜し出したような仲も、そのまま連れ303二ことになって、あのような時にもこのような時にも、知らないふうにしているような夫婦仲こそ、宿縁も深く愛情も厚いと言えましょうに、自分も相手も、不安で自然と気をつかわずにいられましょうか。また、いいかげんに愛情も冷めてきたような夫を恨んで、態度に表わして1304140三するようなのは、これまたばかげたことでしょう。愛情が他の女に移ることがあったとしても、結婚した当初の愛情をいとしく思うならば、そうした縁の伴侶と思っていることもきっとあるでしょうに、そのようなごたごたから、夫婦の仲まで切れてしまうのです。総じて、どのようなことでも心穏やかに、嫉妬することは知っている様子にほのめかし、3124112三言をいうべき場合にもかわいらしくそれとなく言えば、それによって、愛情も一段と増すことでしょう。一般に、自分の浮気心も妻の態度から収まりもするのです。あまりやたらに勝手にさせ110342140四しておくのも、気が楽でかわいらしいようだが、いつのまにか軽く見られるものです。
〰 おもしろ「ことば変換」〰 ![]() 左下「れんじろう」内に下の文をコピペし語を選択後、変換ボタンを押して読んでみよう。変換語によっては面白いですよ。 【現代語訳】 光る源氏 十七歳夏の参議(宰相)兼近衛中将時代の物語 [第三段 左馬頭、藤式部丞(すすむ)ら女性談義に加わる] (11)自分でも額髪を触って、手応えなく心細いので、泣顔になってしまう。堪えても涙がこぼれ出してしまうと、何かの時々には我慢もできず、後悔も多いようなので、仏もかえって未練がましいと、きっと御覧になるでしょう。濁世に染まっている間よりも、生悟りは、かえって悪道に堕ちさ迷うことになるに違いなく思われます。切っても切れない前世からの宿縁も浅くなく、尼にもさせず捜し出したような仲も、そのまま連れ添うことになって、あのような時にもこのような時にも、知らないふうにしているような夫婦仲こそ、宿縁も深く愛情も厚いと言えましょうに、自分も相手も、不安で自然と気をつかわずにいられましょうか。また、いいかげんに愛情も冷めてきたような夫を恨んで、態度に表わして離縁するようなのは、これまたばかげたことでしょう。愛情が他の女に移ることがあったとしても、結婚した当初の愛情をいとしく思うならば、そうした縁の伴侶と思っていることもきっとあるでしょうに、そのようなごたごたから、夫婦の仲まで切れてしまうのです。総じて、どのようなことでも心穏やかに、嫉妬することは知っている様子にほのめかし、恨み言をいうべき場合にもかわいらしくそれとなく言えば、それによって、愛情も一段と増すことでしょう。一般に、自分の浮気心も妻の態度から収まりもするのです。あまりやたらに勝手にさせ放任しておくのも、気が楽でかわいらしいようだが、いつのまにか軽く見られるものです。 |